鉄塔 坪井線
この街に来てもう20年になる。
人生の2/3を過ごしてきた。
通い慣れた道、見慣れた町並み、そのどこかに必ず鉄塔が目に入る。
僕の街は鉄塔の巣だ。
ニョキニョキ生えている。
それを見るたびいつも思い描いた場所がある。そいつを見つけるまでは帰らないぞ!
さあ進め。この電線の先に何かあるかもしれないぞ。
近所の鉄塔から伸びる電線を辿って僕は進んだ。
今日に限って大陽が照り返す。
半袖でも暑い。しかも自転車だ。
でも鉄塔はにょっきりと立ち、僕に語りかける。
俺がきみの探してる鉄塔だよ。
いや、俺だ。
いやいや。
おれおれ。
違います。君たちじゃ無いです。
だけどなかなか見つからないよ。
そりゃそうだ。だって神聖なる場所だもの。
そんなに容易く見つかりゃしない。
1本の鉄塔にたどり着く度に気落ちする。
こいつも僕の探してる鉄塔じゃあ無い。
いや、君もかっこいいんだよ。でも違うんだ。
のどかな風景とは裏腹に大陽は燃えている。
ギラギラと燃えている。
暑いし、こぐの疲れてきた。
それでも電線は続いて行く。僕の旅もまだまだ続くのだ。
いくつもの鉄塔を越え、どれだけすすんだだろうか。
ホーリースポットなんてあるのか?幻想じゃないのか?
いや、きっとあるさ。なかったら単なる莫迦じゃないか。
さまざまな葛藤を胸に僕はひたすら電線を辿って行った。
ん??
なんて面白い事をむりやり考えるのも限界に近い。
何故なら2時間近く走っているのだ。自転車で。
まただ、また違う。
ここも違う。あの鳥が憎い。貴様は飛べるだろうに!
もう帰ろう。疲れた。
帰りは違う電線辿って帰ろう。
仕方ないよ。
もう鉄塔なんか見たくない。
僕の目にはもうこう見えた。
でもそんな時だった。
あ!
あった!!
ここだ。まさに探していたのはここ。
やっと見つけた。
ホーリースポットだ。
鉄塔のかっこよさはなんと言ったってそのシンメトリーな美しさだ。
真正面から見るのもいいけど、絶対に下から見たら素敵なんだ。
ずっとそう思っていた。
これでやっと見れるぞ!
さあご覧あれ。
なんて美しさだろう。
空がシンメトリーに鉄塔に分割されて素晴らしすぎる。
これに比べたら東京タワーなんてどうだって良いとさえ思える。
電飾なんて飾りだ。邪道だ。
鉄塔は鉄塔であるべき姿のみだからこそ美しいんだ。
嫌な事があったらここへ来よう。
きっと忘れられる。
疲れたけどここを見つけられてよかった。
でも僕の鉄塔巡りはまだ終わらない。
もっと高くもっと凄いホーリースポットが待っているのだ、きっと。
鉄塔 坪井線2(御本尊様の立ち姿)
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コメント
今日かなと思っていそいでデイリーを見たら、素敵なことになっておりました。
入選おめでとうございます。
わたくしはこれから京都にひとり旅してきます。
投稿: ヤマグチ | 2008年9月 4日 (木) 17時09分